『スタンドバイミー』はスティーブン・キング原作の小説をロブ・ライナー監督がメガホンを取り、映画化しました。1986年の公開から30年以上経ちますが、未だに色褪せない青春映画として知られています。『スタンドバイミー』を見た方のなかには、「あの話は実話なのではないか?」と疑問に思った方もいるでしょう。今回は、映画『スタンドバイミー』が実話なのかを、撮影秘話とあわせて解説します。
スタンドバイミーは実話ではない!しかしゴーディとスティーブン・キングの3つの共通点がある
映画スタンドバイミーは、原作者スティーブン・キングの過去の体験を基にしていますが、実話ではありません。しかしスティーブン・キングが体験したことが、この作品に大きな影響を与えていると考えられます。
ここは実話①スティーブン・キングも子どものときからストーリーテラーだった
スタンドバイミーの主人公、ゴーディとスティーブン・キングには、多くの共通点があります。ふたりとも小説家という点はもちろん、子どもの頃からストーリーテラーだったという点も共通点と言えます。
スティーブン・キングは自伝的著書のなかで、昔からストーリーを作るのが好きだったと述べています。学生時代は学内新聞で先生たちを面白おかしくからかっていたんだとか。(おかげで規律を重んじる先生からはとても嫌われていたそう)
ここは実話②スティーブン・キングの友人の事故
スタンドバイミーには、アイデアのもとになった、スティーブン・キングの友人の事故があります。当時4歳だったキングが、友人が電車に轢かれたのを目撃してしまったそう。彼の母によると、彼はショックで一日中口がきけなかったんだとか。
ここは実話③幼少期に兄を亡くしている
スタンドバイミーの主人公ゴーディは事故で兄を亡くしていますが、実はキングも幼少期に兄を亡くしています。一方二人が異なるのは両親の存在。ゴーディは両親がいますが、キングのほうは父親が過去に失踪し、シングルマザーのもとで育ちました。
撮影中止危機にキャベツ製のタバコ……知られざる撮影裏話
監督が交代
映画『スタンドバイミー』は、『恋人たちの予感』や『ミザリー』で知られるロブ・ライナーが監督を勤めました。しかし当初は、『ナインハーフ』や『危険な情事』のエイドリアン・ラインが監督をする予定でした。が、ライン監督の休暇取得により撮影スケジュールが遅れ、ライナーが監督を勤めることとなりました。
ようやく撮影と思ったら撮影中止の危機!
『スタンドバイミー』は当初、映画製作会社のエンバシー・ピクチャーズがプロデュースをてがけるはずでした。しかし直前になり同社がコカ・コーラに買収。そこまではよいのですが、撮影二日前にコカ・コーラは「撮影資金の提供はしない」と言い出したのです。
映画制作には、莫大な費用がかかるため、資金の援助が不可欠です。「このままでは映画自体が帳消しになってしまう……」そのピンチを救ったのは、エンバシー・ピクチャーズの所有者でテレビ業界のレジェンドであるノーマン・リア。
彼は、監督ロブ・ライナーの『All in the Family』でプロデューサーを務め、彼の才能を認めていました。そのため、彼の才能を見込んで自分の懐から資金提供することを申し出ました。その資金はなんと800万ドル!現在の為替で8億7,200万円!
いくらレジェンドとは言え、自分のポケットマネーでここまで出せるのは本当にすごいですね。彼のおかげでこれだけの名作が完成したのですから、本当に偉大なことです。
タバコはあの食べ物で出来てる!?
スタンドバイミーの劇中では、やんちゃな子どもたちが当然のタバコを吸っています。映画の中では許されますが、実際に子どもはタバコを吸うのは当然駄目です。では撮影はどのようにして行われたのでしょうか。
当初はCGを使って表現することも考えられましたが、予算関係上NGに。その結果、キャベツの葉っぱで作った偽タバコを使用しての撮影をしました。タバコは葉巻の中に有害な物質がたくさんはいっていますが、キャベツなら安心ですね!
ロブ・ライナーぶち切れ!汽車より監督のほうが怖い?
ゴーディとバーンが汽車から逃げる、ハラハラ・ドキドキのシーン。あのシーンは、安全面を最優先され撮影されました。しかしそのことが仇となり、子役の二人にはちっとも緊迫感がなかったそう。何度もテイクを重ねますがなかなかオーケーが出ず……。とうとう監督はぶち切れ!子どもである二人に怒鳴りつけました。怯えた二人は必死に撮影に挑み、見事に緊迫感のあるシーンを撮ることができました。
そのシーンの撮影が終わると、監督は二人を抱きしめたそうです。よかったね。
ヒルは本物?【真相は謎】
スタンドバイミーのなかでも、印象に残るのが全身にヒルがくっつくシーン。初めて見たときは思わず「うへ~~~」って言ってしまいますよね……。けれど実際あのヒルは本物なのでしょうか?調べてみましたが、これが本物か偽物かを断言できる確かな情報はありませんでした。
インターネット上のサイトのなかには、本物と言ってるところと偽物と言っているところ、それぞれわかれているようです。
ここからは完全に考察ですが、私個人的には指先でアップになっているところは本物で、それ以外は偽物ではないか?と感じています。いくら安全を確認とは言え、子どもに本物のヒルをくっつけるのはちょっと危険ではないかと感じます。上記のキャベツのタバコのように、偽物ではないかと個人的には思います。
パンツの中のヒルは女性的な成長?→個人的にはちょっと……
またこのシーンではゴーディのパンツの中にヒルが入っていました。ゴーディは男子のいちばん大事なところを噛まれてしまったんですね。指についている血も生々しいです。
このシーンを、ネット上では「大事なところからの出血=初潮→ゴーディの女性的な成長、または認められるようになった」といった考察がされています。が、これも個人的にはどうなの?と思ってしまいます。
確かにスティーブン・キングは『キャリー』や『IT』で女性の初潮を物語に取り入れており、映画でもそれが表現されています。しかしスタンドバイミーではあくまでも少年たちの冒険であり、ゴーディが女性的な部分にコンプレックスを抱いているというのはちょっと違うかなと思います。
原作では小説家として成功した主人公が、ニューヨークの川で捨てられた汚い避妊具を見て、ヒルのことを思い出します。このことから性的な成長を象徴していると考えられますが、詳しく語るのはよしましょう。なぜなら原作の冒頭では、次のように述べられているからです。
なににもまして重要だというものごとは、なににもまして口に出して言いにくいものだ。それはまた恥ずかしいことでもある。なぜならば、ことばというものは、ものごとの重要性を減少させてしまうからだ。――ことばはものごとを縮小させてしまい、頭の中で考えているときには無限に思えることでも、いざ口に出してしまうと、実物大の広がりしかなくなってしまう。
『スタンドバイミー』冒頭より
映画で象徴されているシーンを言葉で説明されると、首をかしげたくなるのは、こういう理由だからかもしれません。とはいえ私も考察しまくってるので、何も言えませんが(笑)
死体との対面
いくら名子役といえども、自分の体験したことがないことを演じることはかんたんなことではありません。とくに死体を見るシーンは、物語でもっとも重要なシーンですが、人間の死、とくに他人の死体を発見するという体験はないでしょう。
そのため監督は撮影時に子どもたちが、はじめて死体を対面するように調整しました。通常の撮影では死体となる俳優(または人形)は、事前にキャストは目にすることができます。それを徹底的に隠したのです。
タイトル『スタンドバイミー』と楽曲の秘話
スタンドバイミーの原題は『The Body(死体)』。しかし、このタイトルに製作・配給会社のコロンビア・ピクチャーズは何色を示したそう。というのも原作者のスティーブン・キングはホラー小説家として有名だったため、このタイトルではホラーや『The Body(=身体)』から官能的な映画を連想させる恐れがありました。
そこで監督は、ベン・E・キングの名曲『スタンドバイミー』にちなんだタイトルにして、ラストでその曲を流すのはどうかと提案したそうです。最終的にこの案が採用されましたが、実はスタジオの重役たちからは、この案が一番不評だったんだとか。
まとめ
- 『スタンドバイミー』は実話ではないがスティーブン・キングの実体験が元になっている
- 撮影中止や監督交代などの不運に見舞われながらの公開だった
- 劇中に出てくるヒルは本物か不明
- 『スタンドバイミー』というタイトルは、監督のロブ・ライナーのアイデア
映画『スタンドバイミー』が実話をもとにしたものなのかを解説しました。実話ではありませんが、スティーブン・キングの実体験が元になっています。また、監督交代や撮影中止の危機などさまざまな困難を乗り越えて制作された映画でもあります。
その裏側や苦労がわかると、また見方も少し変わりますよね!ぜひあのシーンをもう一度見て、想いを馳せてはいかがでしょうか。
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